さつき苑では、年末の行事が目白押しのこの時期、年明けに行われる新年会にむけた準備が大詰めを迎えます。
新年会のメインイベントとして、1年間撮りためた写真から一本のスライドを作り、上映します。上の写真は、今年の新年会で上映したスライドの一枚です。
上映中は、ご入居者もご家族もスタッフも一緒になって、笑い、涙します。
会場が一体になります。
介護の知識50 その17『食事前の摂食ケア』
全身状態の低下や認知症の進行で、口腔・嚥下機能の低下や傾眠などによりなかなか食事がすすまない方がいます。
そのような場合、食事前に摂食ケアを行うことで、状態の改善を図ることができる場合があります。
1.傾眠の方に効果的な運動
1) 大きな筋を動かし、脳の血流を増やすことで覚醒を促す
傾眠の原因の一つに、『脳の酸素不足』があります。
脳の酸素不足を補うためには、脳へ酸素を多く運ぶことが必要です。
酸素は血液で運ばれます。
より効率よく酸素を運ぶためには、血液量の多い部位、大きな筋肉を動かすとよいのです。
たとえば、『歩行』は全身の筋肉を使います。
血液が全身を巡り、脳の血流量が上がります。
同様に、足踏みや腕の上げ下げ、腕回し(肩回し)も効果があります。
自分でできない方は、スタッフが手伝って行います。
2.嚥下機能が低下している方へ効果的な運動
嚥下機能の低下といっても、さまざまな状態があります。
その方に合わせたマッサージを行いましょう。
1)嚥下反射を起こしやすくする、アイスマッサージ
飲み込みのタイミングがつかみにくい方、嚥下反射の起こりずらい方に効果的な方法です。
《方法》
①アイス棒(割箸の先にガーゼをまき水につけて凍らしたもの、口腔ケア用の綿棒に水をつけて凍らしたもの)などを用意する。
②アイス棒に少量の氷水をつけて湿らせる。
③食事の前に、アイス棒を使って口の中の部位(口唇(こうしん)、口蓋弓(こうがいきゅう)、舌根部(ぜっこんぶ)、咽頭後壁(いんとうこうへき)※下図参照)をなでるように刺激し、嚥下反射を起こしやすくします。
④口に溜まった唾液や水分を飲み込んでもらいます。
アイスマッサージの部位と方法 凍らせた口腔ケア用綿棒
《注意点》
・強くこすらない
・いきなり喉の奥を刺激しない。(嘔吐反射や迷走(めいそう)神経反射※が起こることがあります)
・いやがる方に無理矢理に行わない
※註:迷走神経反射:主に内蔵の運動神経、副交感神経の知覚神経であり、急激な刺激があると、その防衛反応から心拍数の低下や血圧の低下を招く。
2)唾液の分泌を促すマッサージ
高齢者になると、唾液の分泌量が低下し、食事のときは食塊形成や飲み込みがしにくくなります。
マッサージにより、唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促します。
唾液腺には耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)があり、その部分を指で軽く押したり、ゆっくりと押したりします。
口腔ケア研修にて。顎下腺のマッサージ体験
それぞれのマッサージ方法は以下の通りです。
①耳下腺
人差し指から小指までの4本の指をほおにあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かってまわします(10回)。
②顎下腺
親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで、5か所くらい順番に押す(各5回)。
③舌下腺
両手の親指をそろえ、あごの真下から下を突き上げるように、ゆっくり押す(10回)。
3)唾液の分泌を減少させるマッサージ
2)とは対照的に、唾液が出すぎる方もいます。
多量の唾液は誤嚥性肺炎の原因になります。
その場合は、唾液腺へのアイスマッサージが効果的です。
唾液腺への冷たい刺激により、唾液の分泌が抑制されます。
《方法》
①容器に、氷を入れ、容器容量の8~9割くらいの水を入れます。
②ふたをして、よく振ります。
③唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)の上の皮膚を、ふたで滑らせるようにマッサージします。
④1日3回程度行うのがよいとされています。
おすすめは、口が広いフタの缶 耳下腺のマッサージです
ルーツ「アロマブラック」です。
これらいずれの方法も、継続することで少しずつ効果が表れます。
数多くの摂食・嚥下リハビリメニューをもち、実践されている大分県いずみの園の岩崎部長より教えていただき、さつき苑でも一部のご入居者に取り入れました。
嚥下反射を促す目的で「のどのアイスマッサージ」を行っていますが、やる前に比べると、嚥下の状態や開口がよくなっています。
コーヒー缶を使ったアイスマッサージは、覚醒を促すのにも効果がありました。
唾液の分泌を促すマッサージは、自分たちでやってみても、じわ~っと唾液が出てきます。
唾液は、食べ物をまとめやすくするほか、嚥下時の潤滑剤がわり、粘膜の保湿と保護、消化、口腔内の殺菌など、たくさんの重要な役割を持っています。
食事前にこのようなケアをすることも「食事ケア」の一つです。
食事ケアは、食事をしているときだけのことではありません。
食事前、食事中、食後と、それぞれに食事ケアとして行うことがあります。
引用参考文献:『みんなで考えた高齢者の楽しい摂食・嚥下リハビリ&レク』青木千恵子著、藤島一郎監修 黎明書房
(介護の知識50 その17より)
北海道 鷹栖さつき苑 尾上 健介