11本&DVDの紹介

2012年5月25日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本&DVD 『街場の教育論』 内田樹 ミシマ社

P1080785
『街場の教育論』 内田樹 ミシマ社 1600円 14


 去年から内田樹さんの本をよく読んでいます。

 

教育と介護をめぐる状況には似たところがあって、教育を介護、ケアと置きかえて、この本を読んでいました。

 この本の211ページには、労働の場のルールとして、このようなことが書いてあります。

 ヤマダくんはある教科でいつも一〇〇点をとる。スズキくんは八〇点しかとれない。でも、〇点ばかりとっている隣のサトウくんを気の毒に思って、やり方を教えたので、サトウくんは三〇点がとれるようになった。一〇〇点のヤマダくんが八〇点のスズキくんより高い評価を受けるのは、受験では当たり前のことです。でも、労働の場では違います。労働の場ではスズキくんの点数には、「彼の支援でパフォーマンスが上がった人の点数」が加算される。だからスズキくんはヤマダくんより上位に格付けされる。

 介護の現場で求められるリーダーシップの一つはこういうことだと思います。

 現場のリーダー1人1人の顔を思い浮かべながら、この部分を読みました。

 今は内田さんの『街場のメディア論』を読んでいます。

 (泉田照雄)


 

2012年5月 9日

◆『グレードアップケアプログラム』では、どんな施設をめざしているのか?

P1080785
『街場の教育論』 内田樹 ミシマ社



 講演の後でときどきこんな質問をされます。

「泉田サンが考える理想の施設ってどういったものですか?」

 「そいういう難しい質問はやめってくれんかのう」と思いながらも、「お年寄りが笑顔で暮らし、いいケアができて、職員が笑顔でイキイキと働いている施設」と答えます。

 すると「それはどうやったらできるのですか?」と聞いてくる人がいます。

 「うーん、それは2時間前に話したグレードアップケアをひとつひとつやっていけば達成できるんだよ」と頭の中で思いながら、つぎのような話をします。

 「スタッフがイキイキと仕事をする環境をととのえる、スタッフがやりがいが持てる職場をつくることですね」と。

 内田樹の『街場の教育論』にこう書かれていました。

 教育をケアに置き換えて、教員、教師をケアスタッフに置きかえて読んでみてください。

 「教育改革の成否は、教育改革を担うべき現場の教員たちをどうやってオーバーアチーブへと導くか。彼らのポテンシャルをどうやって最大化するかにかかっています。

 では、どうやってか。教員たちを上意下達組織の中の「イエスマン」に仕立てることによってでしょうか。厳格な勤務考課を行って、能力主義的「格付け」を行うことによってでしょうか。経験豊かなビジネスマンであれば、そのような人事管理政策は『コスト削減』や『不確定要素の排除』はもたらしても、『パフォーマンスの向上』には結びつかないことを知っているはずです。

 私たちの国の教育に求められているのは、『コスト削減』や『組織の硬直化』ではありません。現場の教員たちの教育的パフォーマンスを向上させ、オーバーアチーブを可能にすることです。それに必要なのは、現場の教師たちのために『つねに創意に開かれた、働きやすい環境』を整備することに尽くされる、というのが私の意見です。」(『街場の教育論』20ページ)

 ビジネスをやっていれば当たり前にわかることなのに、ビジネス書や経営セミナーが好きな理事長、施設長にかぎって、ケアをよくするための最も大切なことをおろそかにしている人が多いんですよね。

 もったいない話です…。

 そういう理事長、施設長は、自分の施設の組織がガタガタ、ケアもイマイチなことは気づかずに、キャリアラダー作成、人事考課を一生懸命やって、「うちにはこんなシステムがあるんですよ」と的はずれな自慢をしがちです。

 グレードアップケアは何を目的にしているのか?

 その一つは「創意に開かれた働きやすい環境を整備すること」です。

 (泉田照雄)

※関連記事

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本&DVD 『呪いの時代』 内田樹、『NHKテキスト 幸福論 アラン』 合田正人。

◆『最終講義 生き延びるための六講』 内田樹著 技術評論社

 

2012年4月27日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本&DVD 『しろくまカフェ』 ヒガアロハ

P1080786
『しろくまカフェ』 ヒガアロハ 小学館 ¥648

 カバーにうつっているシロクマくん(おしゃれなカフェのオーナー)と常連客のパンダくんやコウテイペンギンくんのまったりとした毎日を描いた動物系スローマンガ。

 『ハチミツとクローバー』を描いた羽海野チカの『3月のライオン』を読もうかどうしようか迷っているうちに、先にこれを読んでしまった。

 ムムム。

 動物系のスローマンガ(こんなジャンルあるのか? 『動物のお医者さん』とかか…)も心の緊張をとるのにはぴったりです。

 (泉田照雄)

 

2012年4月26日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本&DVD 『動的平衡』 福岡伸一 木楽舎 

P10807877  

『動的平衡』 福岡伸一 木楽舎 ¥1524  13

 ベストセラーになった本です。

 232ページにこんなことが書いてあります。

 「『生命とは動的平衡にあるシステムである』という回答である。

 そして、ここにはもう一つ重要な啓示がある。それは可変的でサスティナブルを特徴とする生命というシステムは、その物質的構造基盤、つまり構成分子そのものに依存しているのではなく、その流れがもたらす『効果』であるということだ。生命現象とは構造ではなく『効果』なのである」

 生命とは構造ではなく、動的平衡によってもたらされた効果というのがおもしろかったです。

 福岡ハカセの文章はとっても、とっても読みやすいです。

 サイエンス系の文章としては、もっとも読みやすい文章なのではないだろうか?

 (泉田照雄)

2012年4月15日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本 『心の仕組み 上』 スティーブン・ピンカー

P10805107

 『心の仕組み 上』 スティーブン・ピンカー著 NHKブックス 1160円 12


 アメリカではベストセラーになった本らしいですが、とっつきやすい本ではありません。

 でも、詳細かつ具体的に書かれた解説部分が、この本のおもしろいところです。

 この本を読んでいると、とらえどころのなかった心が複数の演算系なのだということがわかります。

 もちろん、心のすべてではありません。

 ある程度までですが、それでも、「心が複数の演算系として説明できる」ということはエキサイティングでした。

 中巻、下巻とどんな展開になるのか、楽しみです。

 下巻は家族の価値と人生の意味という章があります。

 心の仕組みから、家族の価値や人生の意味へどのように話が進んでいくのでしょうかね…。

 (泉田照雄)

 

2012年3月16日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本&DVD 『アタゴオルは猫の森』 ますむら・ひろし メディアファクトリー

Dvc005567

『アタゴオルは猫の森』 ますむら・ひろし メディアファクトリー 540円

 ますむら・ひろしのアタゴオルのシリーズを読み始めたのは大学生の頃だったと思います。

 あれから25年以上が経ちますが、今読んでも心がなごみます。

 バリバリと仕事をしていたので、心をゆるませようと、仕事の合間合間に読んでいたら、1巻から15巻まで読んでしまいました。

 17巻ぐらいまであるのかな。

 色がついた状態が見てみたくて、DVDも見てみましたが、マンガの方が僕は好きです。

 (泉田照雄)

 

 

2012年2月24日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本 『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』 浅田次郎 文芸春秋

P10805567

『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』 浅田次郎 文芸春秋 11

 

 浅田次郎のエッセイをよく読む。

 須賀敦子や村上春樹のエッセイもよく読むが、2人の文章は僕にとっては体にじんわりとしみこんでくるようなよさがあり、ひとつひとつの文章そのものも味わい深い。

 「肌の合う文章」なんだと思う。

 まあ、好きなのである。

 浅田次郎の文章のひとつひとつは、僕にとっては体にしみ込んでくるようなものではない。

 ひとつひとつの文章は、あまり好きではないタイプである。

 ちょっとオジさんくさい。

 それでも、浅田次郎のエッセイをよく読むのには、2つの理由がある。

 一つは、構成がとってもうまいのだ。

 「うまいなぁ」と唸らざるを得ないくらいうまいことが多い。

 もう一つは、そこで語られている物語が心にしみる。

 さすが『壬生義士伝』『鉄道員(ぽっぽや)』を書いた浅田次郎である。

 じんわりとしみこんでくる。

 「うまいなぁ」「しみるなぁ」なんて、まるでおいしいお酒みたいだ。

 かくして、浅田次郎の新刊を見つけると、「うまい」「しみる」を感じたくてついつい買ってしまうのである。

 期待を裏切られたことはない。

 これも歴史ある老舗のバーのカクテルに似ている。

 いつもおいしいんだなぁ。

 (泉田照雄)

 

 

2012年2月17日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本&DVD 『一流選手の親はどこが違うのか』 杉山芙沙子 新潮社

P10805517
『一流選手の親はどこが違うのか』 杉山芙沙子 新潮新書 10

 

 [Father&son]

 高校3年生になるまで、僕は父と成績や進路、ましてや人生についてなど、話したことがなかった。

 叱られた記憶もない。

 かといって、ほめられた記憶もない。

 父と長い話をしたのは、高校3年生の冬、大学の合格発表の日だった。

 たしか、中央大学だったと思う。

 その年僕が受けたなかで最後の発表…。

 勉強をしていていなかったから当然なのだけれど、つぎつぎと不合格になっていた僕は、当然とはいえ、それなりに落ち込んでいた。

 家を出る直前、父は急におれも行くと言い出した。

 思った通り不合格だったことを確認した後、僕たち2人は、つたのからまる古びた塀沿いの道をとぼとぼと歩いていた。

 寒い日で、空は灰色にどんより曇っていた。

 「進路のことはおれが一緒に考えてやる」

 父はそう言った。

 その後、近くの喫茶店に入り、これからの時代は理系が有利だとか、こういう企業に入った方がいいぞみたいなことを話してくれた。

 僕自身は理系に進学するつもりはまったくなかったし、就職のことなんて想像もできず、目の前の浪人決定という事実に気持ちが沈み、父の話はほとんど聞き流していた。

 父は長い人生をどう歩いていったらいいか、ここが息子が成長する大切なポイントであると思い、一生懸命話してくれたのだろう。

 ただ…今でもそうなのだけど、父は話しだすと長い、というか止まらない(笑)。

 こういうとき、子どもは話を聞き流してしまう。

 罰あたりなことに。

 話の内容はともかく、「進路の話はおれが一緒に考えてやる」と言ってくれた父の気持ちは今でも僕の心にしっかりと残っている。

 父はたぶんその一言が言いたくて、柄にもなく、息子の合格発表につきあったのだと思う。

 あの日「ありがとう」と言えなかった僕に、記憶の中の父はいつでもやさしく微笑んでいる。

 (泉田照雄)

 

 

2012年2月10日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本 『もういちど村上春樹にご用心』内田樹 

P10805497
『もういちど村上春樹にご用心』 内田樹 アルテスパブリッシング 9

 

 この本の96ページに次のように書いてあります。

《 「地図もガイドラインも革命綱領も『政治的に正しいふるまい方』のマニュアルも何もない状態に放置された状態から、私たちはそれでも『何かよきもの』を達成できるか?」

 これが村上文学に伏流する「問い」である。》

 この文章を読んだときに、村上春樹の小説を読んでいると、自分自身の生き方を考えてしまう理由がわかりました。

 もう一つ、97ページにこんなことが書いてあります。
《 「霊性」というのは、「つながっている感覚」だというのは私の基本的な理解です、
 時間的にも空間的にもどこまでも広がっているネットワークの中に自分がいて、自分がいることで「何か」と「何か」がつながっている。自分がいなくなってしまうと、その「つながり」が途絶えてしまうかもしれないから、生きている間にがんばって、その「つながり」を自分抜きでも機能するようにしておく…というのが「霊的成長」ということではないかと思います。
 中略
 霊的成長というものがあるとしたら、それは「私がいなくても、みんな大丈夫。だって、もう『つないで』おいたから」というかたちをとるんじゃないかと思います。》

 この部分を読んだときに、自分が進むべき道の上にかかっていたもやが少し晴れたような気がしました。

 とっても勉強になりました。
 (泉田照雄)

 
 

 

 

 

2012年1月27日

◆ほぼ毎週金曜日掲載 今週の本 『アースダイバー』中沢新一 『日本の下層社会』横山源之助 

P10805127
『アースダイバー』 中沢新一  7

P10805117
『日本の下層社会』 横山源之助   8

 岩見沢へ向かう特急列車の中で、僕は『アースダイバー』の最終章を読んでいた。

 窓の外は一面の雪景色。ここ数日、観測史上有数の寒波によって、雪が降り積もっていた。オレンジ色のきつい陽射しが窓から差し込んでくる。

 僕はとても幸せな時間をすごしていた。

 この本が自由に思索することの素晴らしさ、楽しさと、思索の楽しさを思い出させてくれたからだ。

 そんな風に感じたのはほんとうに久しぶりだった。

 中沢新一は、現代東京の地図の上に縄文海進期の東京の地図を重ねた「アースダイビングマップ」を持ちながら、東京にスキューバダイビングならぬアースダイビングをして、東京の地形と歴史から今の東京を考えていた。

 著者がそのアースダイビングをエキサイティングに体験していたのが、文章からひしひしと伝わってきます。

 『日本の下層社会』は、『アースダイバー』の中で紹介されていたので拾い読みしました。

 大学生のころに一度拾い読みした記憶があるのだけど…。

 東京の下町に生まれたものにとっては、とっても面白い本です。

 東京の下町は、この本が言うところの「下層社会」ですから、自分が生まれ育った町の歴史についての知識が増えました。

 (泉田照雄)

 

より以前の記事一覧

無料ブログはココログ
2012年5月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック