夏恒例のフキ取り。水辺には綺麗なフキが多く生えます。
年度が年度が替わり新たに課長職に昇格した職員が3名いる。みんな40代だ。
そこで、総務から『彼らのために何か話をしてもらいたい』といわれ、簡単なメモを創った上で話をさせてもらった。
今回は安倍が彼らにどんな話をしたかを書こうと思う。
池袋から、西武池袋線に乗って15分くらいのところに『江古田』という駅がある。
周辺に大学が3つあり、学生とサラリーマンたちが暮らす町だ。
安倍はその町で学生時代の3年間を過ごしたが、その間に常連となった居酒屋があった。
駅から3分程の場所にある『仲屋』という、カウンター席だけの小さな居酒屋だ。
そこには今でも上京する度に顔を出しており、常連客としての安倍の歴史はなんと50年近くにもなる。
店 の造りは50年前と少しも変わっていない。狸の置物も同じ場所にある。
だから入った瞬間に50年前にタイムスリップしたような、懐かしさの伴う不思議な気持ちになる。そして何より店主のモッチャンと奥さんのミヤちゃん、そしてなじみの常連さんたちが醸し出す雰囲気が心地いい。
そういえば相当前の話だが、泉田さんをその店に連れていったことがあった。
その時は、『片腕ではなく両腕だ』と言って紹介された、泉田事務所の(できる)女性職員さんも一緒だったと思う。
その時の話題は『雰囲気が大切、雰囲気が大事』という女性ならではの話だったと思う。
『雰囲気』って数値化できないし、『エビデンスは?』と言われても、きわめて感覚的なものだから答えようがない。でも間違いなく人に伝わるものであるし、そこが大切なんだということは、施設や事業所に置き換えてみれば良くわかる話でもある。
でもその良い雰囲気をどうやったら創り出せるかだよな。
さてある時、店が終わるまで居残って一人で飲んでいたら、暖簾をしまった後で店主のモッちゃんとミヤちゃんの二人が、その日のお客さんの様子や関わり方について『振り返り』を始めた。俺は驚いたね。
その内容は、初めてきたお客さんに『もっと声をかけてあげればよかったよね』とか、どの料理を進めるべきだったとか、出すタイミングのこととか、もっと店の食事やお酒、雰囲気を楽しんでもらうために自分たちがするべきことについての振り返りだった。
反省点も含めてしっかりと話し合っているんだ。 聞けばそれが毎晩のルーティンだという。
コロナで大変でなかったかい?と聞けば、常連さんたちが『この店が無くなっては俺たちが困るから』と言って守ってくれたという。
50年以上も同じ場所で店を続けてこられたことには、ちゃんとした理由があった。そして雰囲気がどう作られていったかについても答えがあった。
さてこの話が前振りなんだが、この辺で3人の新任課長達に渡したメモを紹介しようと思う。
ダウンロード - e696b0e8aab2e995b7e381ab.pdf
なぜ①にこれが来るかというと、俺たちは社福だからね。
④については、はるか大昔のことになるけど、中田光彦さん(当時は特養の相談員、で後にホームヘルパーに転身)が、施設であっても自由な暮らしづくりや個別の希望の実践が求められる、ということを言い出して実践を始めていった歴史がある。
その続きの動きになるのかもしれない。
希望や願いといっても、重度の人にそんなものはないのでは?とか、聞いても応えてくれなくてという反論はもちろんあるだろう。
老いが進めば進むほど、希望や願いはごく身近なことになることが多くなると思う。
だから入院して、おむつへの排泄を余儀なくされていた人などは、『自分でトイレに行って排泄したい』が切なる希望や願いであったりする。
だから、運営理念に『自分の家に帰りたい』に続く言葉として『自分でトイレに行って排泄したい』と書いてある。
そして、『一人一人いろんな希望や願いを持って生きている』と続き、更に『なんと多くの人が立ち直る力を持っているのかおどろくほどである』とつづられている。
これを一人一人のケアプランとして描き、本人に伴走する形でやるだけなんだよな。
さて新課長3人に対する締めくくりとして映画を見てもらった。
それは『世界最速のインディアン』という題名の映画で、近所から変わり者扱いをされているニュージーランドのバイク狂の老人がアメリカで行われるスピードを競うレースに出場するための旅の話、ロードムービーだった。
何のためにその映画を見せたのかというと、ケアプランを考える際の立ち位置の話でもあるし、何かに挑戦することや、人と人との出会いがどれだけ人生を豊かなものにしてくれるか、そこを考えてもらうためでもあった。何より元気が出る映画だ。見ればわかる。
最後に。実在の人物でもある主人公・バート-マンロー氏の言葉を紹介しておこう。
『夢への挑戦がない人生なんて、畑の野菜と一緒だ』 『難しいなら、より懸命に取り組む。不可能なら更に懸命に取り組む。どんなことも試し、それをやり遂げるのだ』
……バート-マンロー
(社会福祉法人美瑛慈光会 理事長 安倍信一)
次回は7月20日です。お楽しみに。
◆毎月20日掲載「40代の部長、施設長へ 第5回『ケアの原点について話そう』」 美瑛慈光会 理事長 安倍信一
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